第一章

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第一章

桜の木はもうすぐ満開に近いころ、私は朝の始発の電車の中で虚ろな目を擦っていた。乗り込む人の多さはいつも通りに感じたが、やはり季節は通り過ぎることを知らせるように若草の香りを車内に運んでくる。 私は田舎町からそれは遠い、大都市と人々から呼ばれるようなきらびやかな街の進学校に通っている高校2年生である。私の町からは電車で片道2時間かけて平日毎日通学している。 なぜ、そんなにまで時間がかかってもその学校へ行きたいかというと、私は中学の頃、勉強ばかりしていて、優秀な成績を取っていた。しかし、人に強く当たれない気性で、それをいいことにあまり好ましくない、友達と言っていいのかわからない人々の言われるがままになってしまい、最悪なことにある試験でカンニングに手を貸してしまった。 その時はうまくやり過ごせたものの、下手をすれば進路に影響していたかもしれない私の中では大変な事件を起こしてしまった。 なので、二度とこんな事はごめんだ。と彼らの学力では到底入れない遠い街の進学校へ通うことをその事件の後硬く決意した。 それからというもの私は毎日その高校へ行くために寝る間も惜しんで勉強をした。もともと長時間勉強するのには慣れていたので、普通の人なら3日で音をあげてしまうような猛勉強を入試前日までし続けた。そして模試の結果では、「A判定」つまりは、余裕で合格圏。という結果を叩きだし、入試当日を迎えた。
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