学校は平和的だった…はず。

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またもやピンポーンと音を鳴らす。 「矢神さーん。いますかー?」 トントンとノックしても返事がない。いつもの矢神さんなら、めっちゃ静かに出てくるけど…。留守かな? 四季はドアノブをひねった。 ぎーっと音を鳴らしながら、開くドア。 開いてる? 矢神さんは用心深いから、外に居るときは、必ず鍵をしめてるはずなんだけど。部屋にいるのかもしれない。 「矢神さーん。お邪魔します」 「勝手に入って良いの?」 鈴は可愛らしく口元に手を置き、開いている手で私の袖を掴んでいた。 部屋はものすごく狭いので、玄関入ったらもうリビングだ。 のっそりと入ると、視界の端から足が見える。 よく見ると、矢神さんがベッドの下で横たわっていたのだ。 「や、矢神さん!?」 慌てて駆け寄ると、荒い息。 とても苦しそうだった。四季は、そっと首元に手を置くと、あまりの熱さに勢いよく仰け反った。 「だ、大丈夫なの?この人」 鈴は慌てすぎて、ウロウロしている。 「大丈夫だと思う」 今日の雨で、矢神さんは私を優先して自分の傘を貸してくれた。この熱はそのせいだろう。元から風邪ぎみぽかった矢神さんの熱は、悪化してしまったようだ。 どうしよう…私のせいだ。 私は自分より一回り大きい、矢神さんを背中に乗せると、ベッドに寝かせた。 後ろでは、鈴がおおーっと拍手している。 「矢神さんちょっと借りますね」 勝手にタンスをいじってはいけないだろうが、ここは緊急事態なので仕方ない。タンスを開けて、一番小さなタオルを取り出した。 それを水に濡らし、頭に乗せる。 うーん。お面が邪魔だ。 狐のお面が邪魔すぎる。どかしていいものなのだろうか。でも、彼が今まで外している所を見たことがないらしいので、そんな軽く外しちゃいけないものなんだろう。 ちょっと後悔しそうだけど、相手の嫌がる事はしちゃ駄目よね。 と、結論が出たので、狐のお面はどかさず、素顔を見ることなく冷えたタオルを矢神さんの額にのせた。
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