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私は万華鏡が好きで、その収集を趣味としている。世の中には万華鏡作家なるものが存在して、趣向を凝らした万華鏡を制作しているのだ。彼らの一品ものを集めるのが、私の唯一の楽しみだ。
さて、ここにひとつの万華鏡がある。
ごく普通の円筒形をしているが、一般的な万華鏡よりもかなり大きい。賞状を収める筒くらいの大きさだ。
「いかがでございましょう。明治時代の初期に作られた品でございます」
この万華鏡を持ってきた骨董商は何やら色々と説明をしているが、私の耳には半分も入ってこない。私はこの万華鏡の美しさに魅入られていた。円筒の外側は何とも奇妙な様相を呈している。七宝焼きであろうが、その模様をどう表現してよいのかわからない。幾何学模様ではないし、風景や物を描いたものでもない。意味のある形ではなく、これまで私が見たどんな抽象画とも似ていない。
「この万華鏡には、持ち主が変わるたびに中の星が増えてゆくと言われております」
私はその万華鏡を手に取って、中を覗き込もうとした。
「お待ち下さい。中を覗くのはお止めになった方がよろしいかと存じます。中を覗いた者には不幸が訪れるとの言い伝えもあります」
覗かなければ万華鏡の用をなさない。しかし、そんな言い伝えにも妖しい魅力を覚えた。
「値段はいかほどかな?」
告げられた値段は安くはないものの、買えないほどでもない。私は迷わず購入した。
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