万華鏡

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万華鏡

 三枚の鏡と聞いて何を連想するだろうか?  女性ならば化粧台の三面鏡と答えるだろう。車好きの人ならば自動車のサイドミラー・バックミラーと答えるかもしれない。  私ならば万華鏡を挙げる。  万華鏡は、基本的に三枚の鏡を用いて制作する。縦長の鏡三枚を内側に向けて三角形に組み合わせる。筒状になったその内側へ色とりどりのビーズなど(星という)を入れることによって、六十度で向かい合った鏡三枚が幾何学模様を描き出すのだ。  万華鏡が描き出す模様はひとつとして同じものはない。中に入れるビーズなど集まり具合はその時々によって違い、異なる模様となって三枚の鏡に映し出されるのだ。同じ角度に持ち上げて覗き込んだとしても、同じ模様は現れない。その時に見た模様はその時限りのもので、同じ模様には二度と巡り会えないのだ。  そういった意味では、万華鏡は生き物に似ているかもしれない。生き物は刻一刻と変化を続けている。それとわかる外見の変化はないかもしれないが、細胞レベルでは分裂と死滅とを常に繰り返しているのだ。今の私と一分後の私とは、厳密には同じでない。私という人間は、一日間といえども一時間といえども同一ではいられないのだ。     
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