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「……華は隠し事が下手だからな」
翔平のポツリと放った一言は、華を心底驚かせる。
「俺に何か話があるんだろ?」
もう一言、翔平が付け足すと、更に華の心臓はぎゅっと縮こまる。
今日こそは言わないといけないと思って、決心していたことがあった。
でも、言うまでは楽しく過ごして居たかった。
だから、華は翔平の好物のとんかつを揚げたし、平常心を装って、いつも通りにしていたつもりだったのに。
翔平は華の皿にまだ残る、数枚のレタスを見て居た。
とんかつにはせんキャベツだと言い張ったのは、華だったのに。
それを翔平が忘れていると思っているのだろうか。
本当に、華は隠し事がへたくそだ。
二人の間に気まずい沈黙が流れ、華の潔さが顔を覗かせる。
「……ごめんなさい。別れたいの」
絞り出した言葉を聞いて、翔平は大きなため息を吐いた。
先ほどまで部屋の中まで差し込んでいた日差しが、急になくなり、一気に部屋が寒々しい雰囲気になっていく。
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