子供時代 ー 田舎町の鉄工所 ー

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子供時代 ー 田舎町の鉄工所 ー

 僕の両親は、僕が5歳の頃に交通事故で亡くなった。そのあと、僕を育ててくれたのは、10歳年上の姉だ。姉は、高校進学を諦め、町の小さな鉄工所で働いた。そこで知り合った譲治(じょうじ)という5歳年上の青年と結婚した。姉が17歳の時である。姉は高校へは進学しなかった 。勉強が好きではなかったというのが一番の理由らしい。が、実は、姉は校内でも有名なスケバンだったという。教師からも生徒からも怖がられる存在だったそうだ。一方、夫となった譲治(じょうじ)は、(僕は彼を「ジョー」と呼んでいるが、)どちらかといえば穏やかで、姉とは正反対の性格の持ち主である。  ジョーは僕を本当の弟のように可愛がってくれた。 僕にいつも言っていたのは、「しっかり勉強しろよ。お前はできる奴だからな」ということだ。僕のために家庭教師をつけてくれた。お陰で、小学校から中学校まで優秀な成績を修め、町で一番優秀な高校へと進学した。僕の高校では、同級生のほとんどが上京し、国内有数の大学へと進学するのだった。しかし、ジョーは僕が大学進学を希望しているなんて微塵も思ってないようだった。高校卒業後、ジョーが経営する小さな鉄工所の見習いとなるのが僕の運命だった。僕はジョーが大好きだったし、尊敬すらしていた。だからこそ、ジョーを傷つけたくなくて、僕は大学進学をほぼ諦め、鉄工所の見習いとして働くことに決めたのだ。
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