佐藤さん

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 *** 「藤さんっていうんだね」 「え、なんで……」 「名札」 「あ……」  佐藤さんと話をしたのは、二年前。私が中学の二年生だった春だ。  私は友達とケンカをした。私のちょっかいがきっかけだった。最初は一対一のケンカだったけれど、そのうち友達のほうに、クラスメイトたちが味方するようになって、嫌がらせを受けるようになっていった……靴を隠されたり、傘でつつかれたり、さりげなく雨水をかけられたり。  ある雨の日、そういった嫌がらせ……いじめを受けていた私をたまたま見かけて、声をかけてくれたのが、そのとき高校生だった佐藤さんだった。面識はなかったけれど、私は佐藤さんの優しさに甘えて、胸に抱えていたものを全部吐きだした。  佐藤さんはほんとうに親身になってくれて、何度か会って、話を聞いてくれた。そして、少しだったけれど、アドバイスもくれた。  あるとき、佐藤さんが私を誘った。 「藤さんの名前で思い出したんだ。ここから一駅の公園に、きれいな藤がある。見にいこう」
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