佐藤さん

1/4
前へ
/4ページ
次へ

佐藤さん

 佐藤さんの名前がほんとうは「佐藤」ではないと知ったとき、私は「だまされた」と思った。  たまたま立ち寄ったコンビニで、私は佐藤さんを見かけた。  店員の制服を着て、レジを打つ佐藤さん。私は蒸しパンを手に取って、レジへ行こうとした。 「矢島さん、ちょっと」 「あ、はい」  私は耳を疑った。  奥の店員は、明らかに「ヤジマ」と言った。そして佐藤さんは、「はい」と答えた。「佐藤です」とは言わなかった。  佐藤さんが「佐藤さん」ではないと知ったとき、私は、「あの人はほんとうにまじめそうで優しそうな顔をしていたけれど、なんという人たらしだったのだろう」と思った。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加