貴方との出会いについて

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貴方との出会いについて

 私が彼女と出会ったのは、小さなサークルが「新歓一大イベント!」と掲げていた花見であった。  その新歓に参加した感想を一言で表すのなら、拍子抜け、だろう。桜を眺めるのではなく新入生の女性という花を眺めることが目的であったようだ。これでは花見ではなく女見ではないか。  更に言えばやって来た花、もといもう一人の参加者の一年生女子、いわゆる"一女"が途中参加をしてからは輪をかけて退屈となった。  桜のような淡いカーディガンで白いシャツ、下はスキニージーンズ。そんな出で立ちの彼女が現れた瞬間、周りの先輩方は美しい桜の花の精が舞い降りたかのように喜び、盛り上がり、そして私を置いて立ち上がり、群がった。  魚だ、と思った。水槽に人が近寄ったときに、中の魚たちが餌を貰えると勘違いし必死に水面で口を開けているようであった。  あまりの急変に興醒めはしたものの、折角の桜を見ないのも惜しいと思い一人で桜を眺めることにした。花見に来て花見をしない道理はない。     
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