風に揺れる秋桜

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「じゃ、これもよろしくー」 「おつかれ、三木ちゃん」 最近、思い出した記憶 「柚那って、仕事早いし頼んだ方が楽だよねー」 「うちらの仕事やってもらえばいいんじゃない?」 「たしかにー!面倒っぽい仕事は特にね」 「ミスしたら課長めっちゃ怒るからほんと無理」 「今度から仕事押し付けちゃお!」 かすかに、記憶にあった。 このころはそんなに苦に感じていなかったけど、今ではこりごり。 先輩だったし、おとなしかった私は、頷きながら仕事をしていたんだ。 「三木ちゃん頑張ってねっ!」 そんな声、いらない。 私には、ミライがいる。 付き合い始めたあの日から、 一度だけ恋人っぽくキスをしたことがある。 冷たい彼の唇が、悲しみを連れてきた。 触れることは、嬉しかったのだと思うけど。 もう、10月になっていた。
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