第1章 母ちゃんの笑顔

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理人にとって輝は唯一の友達であり、理解者だった。 「なぁ、算数の100点、母ちゃん喜んだか?」 「えっと・・・・、あははぁ、だめだったやぁ」 ちぇっと輝は口をならした。 「うちの母ちゃんなら、仏壇にかざるけどなぁ。 って、俺100点取ったことないけどな」 輝は白い歯を見せてニカッと笑った。 着いたのは歩いて5分程の田んぼ脇の細い水路だった。 「ここにマッカチンがいるの?」 「あぁ、いるぜ」 言うと輝は網を持って水路のきわを何度か泥と一緒に救い上げて雑草が生い茂る草の上にひっくり返した。 真っ黒な泥の中に何やらモゾモゾと動くものが見える。 「輝くん、なんか動いてるっ」 「まぁ見てろって」 輝はその動くものを器用に掴むと水路の水ですすいだ。 輝の手には5センチ程のザリガニが、元気よく両のはさみを動かしている。 「それがマッカチン?」 「ばかだなぁ、マッカチンはもっとすげぇぞ」 「あーうん、僕もそう思った」 輝は躊躇なく、手に持ったザリガニの胴体と尻尾をちぎった。 「て・・・輝くんっ、何してるのっ!」 理人は目の前で真っ二つになったザリガニを見て、目を丸くした。 輝が胴体をポイっと草むらに捨てると、ザリガニは胴体だけで動いていた。 「てっ輝くんっ、あのザリガニまだ動いてるよ!」 驚く理人をお構いなしに、輝は尻尾の皮をむくと空の水槽に入っていたタコ糸に結び付け、糸の反対側に割りばしの先端を結んだ。     
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