第3章 フラン(前編)

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第3章 フラン(前編)

 ひとたび木立の中に足を踏み入れれば、空気はひんやりとしたものに変わる。 先程まで全身で踊るように付喪神たちと過ごしていたため、理人も輝も汗をかいている。 木立の間を通り抜ける風が、二人の前髪をさらさらと揺らし心地よい。 「あっ」 輝が何かを見つけたように走り、それを拾う。 「輝くん、それなぁに?」 「なぁに?って、棒だよ!」 輝は自分の腰ほどの長さの木の枝を見つけ、それを天高く掲げるようにして得意げに笑う。 「え? いいなぁ、僕も欲しいっ」 「よし、じゃぁ次は理人のをさがそう!」 ふたりは歩きながら、手ごろな枝が落ちていないか探す。 ふと、理人の顔がぱっと笑顔になる。 「あった!」 走って駆け寄ると、それに手を伸ばす。 理人の小さな手におさまる、程よい太さだ。 「輝くんっ、ぼくも見つけたよぉ」 理人が振り返り、見つけた棒を振り回すように輝に見せる。 「っ!」 輝が目を丸くした。 「理人・・・・それって・・・・・」 「え?なに?」 理人が握った棒へと視線を向ける。 「あ・・・れ?」 棒だと思ったそれは、理人が握った部分の両脇がだらんと下に垂れている。 「え?紐?」 そう思った時だった。     
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