バラ線はいともたやすく燃ゆる

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 自らが一生懸命運んでいたバラ線がいとも簡単に消えゆくその様子をまじまじと見ていたぼくは、そこにむなしさというよりも一種の希望を感じるのだった。 がんじがらめになった縄、いやこの場合はりがねとでも言ったほうがいいかな、 とにかくそいつが一気に解けた気がして、何かぼくの中のこんがらがった感情が横にいるかれんな少女の心と同じようにあたたかいものになるのを感じたんだ、その時。  すると、その感情がめばえたのはぼくだけじゃないみたいで、ようやく意識を取り戻したマヒシャやバラ線運びの作業場のボスや、ほかの黒民のスーダーラ、バイジャ(今現在黒民にはクシャトルーラもバラムーンもいない。あとで確認してみると、エメラルドのひとみの姫さまも現世ではスーダーラとして生きていたようだ。)たちも、たちまち現世のしがらみというバラ線のハリガネから解放され、勇ましい顔で目の前にいるデイヴァロウク王の生まれ変わり、つまりアンリ・マンユーに立ち向かったのであった。 そして、アンリ・マンユーに扇動されて石を投げ、弓矢を放っていたはずの白民たちも、みんな我にかえり、というよりも魂が入れ替わったような感じで、敵であるはずの自分たちでさえも守ってしまうやさしき黒民の王女を支持しはじめたのだった。
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