バラ線はいともたやすく燃ゆる

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 いよいよだれも味方がいなくなったアンリ大首長は、もともと悪に染まっていた顔をよりくしゃくしゃにして、大声でわめき泣きはじめたのだった。 「く、くそう、そうやって何もかも。 なんできさまらは、そうやってすぐに味方を増やしてしまうのだ。 そうやってすぐに、私の忠実なしもべだったはずの、私の兵隊を骨抜きにしてしまうのか。 いいか、なあ、でも私は何度でもよみがえるぞ。 いいか、ただの善悪二元論のいたちごっこはもうごめんなんだよ。 いったいいつ、だれが、人間は生まれながらに善だと規定した? だれが、私のような者を悪だと規定した? 仏か? 神か? それとも孟子(もうし)か? それとも荀子(じゅんし)か? いや、アフラ=マズダか? ニーチェ。 あははは。 神が、神がみんな死んでいく。」 アンラが倒れそうになりながらも泣き笑いつつ踊っている。 その姿はあわれを通り越して、こっけいでさえあった。
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