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この荒野の国には、久しく見なかった平和というものが再び訪れた。
人びとは平等という概念を手に入れ、色の違いなどという小さな差など気にしなくなった。
でもそれは、だいぶ後の話だが。
人々は新しい概念を手に入れたときに、迷う。
新しい概念の、
使い方に迷う。育て方に迷う。愛し方に迷う。創り方に迷う。
「けれども。
いつか、人間はそれを使いこなし、前に進める、そう信じているからこそ、人間というのは進化していけるのだよ。」
ぼくはそうぽつりと、悪の魂の抜けてただのやさしい青年になったアンラに言ったのだった。
その好青年はただ、うれしそうに笑みをうかべながらのんびりと昼寝をしている。
その気持ちよさそうな寝顔を見ていると、ぼくもなんだか眠くなって。
ん?
なつかしい声が聞こえる。
母さんの声だ。
母さんがこもりうた代わりに聞かせてくれた物語。
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