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流されるままノコノコと手羽先の美味い店に向かって歩いていた。
「ナンパでしょうね」
「そうだったんですか?」
「それだと嫌ですか? 嫌なら……」
「嫌なら、どうなるんですか?」
隣を歩く男を見上げた。
「嫌ならナンパじゃないことにしましょう。そうだなぁ、映画の後、偶然手羽先を食べに行きたくなって向かう店が一緒だったから並んで歩いているだけ……みたいな感じに」
「並んで歩いてるだけなら、店に入ったら別々の席ですよね?」
「それは、困ります。俺は貴方と一緒に食べたいんですから」
一瞬、ドキッとした。
映画館で席を間違えたことから、ふいに混じり合うことになった不思議な縁を感じた。
運命的な出会い。
いつもとは違う出会いに、私は少し期待していた。
★
改めて、テーブルを挟んで目の前にいる数分前まで見知らぬ男だった男を眺めた。
「?」
私と視線を合わせた岡田さんが言葉を発しないまま『何か?』と問いかけていた。
「慣れない人と食事するのは、緊張して」
手汗をかいたので、またおしぼりで手を拭いた。
「……」
何も言わない岡田さんが気になり、おしぼりを置いてから岡田さんの方を再び見た。
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