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おひとりさま
★★★
「キャラメルポップコーンとリアルゴールドのMを下さい」
映画館の売店。映画の半券を出すと売店の品物を200円割引してくれると券に書いてある。
「あと、これお願いします」
半券を差し出す。
「かしこまりました」
笑顔を嘘くさく感じさせない対応の20代前半くらいの店員さん。2つにわけて縛った肩に着くくらいの髪に赤い帽子が似合っている。
愛想の良い店員さんで良かった。映画を観る前は、極力いい気分でいたい。
1年前もここへ映画を観に来た。
あの時は、映画を観る前に近くのオシャレなイタリア料理の店へ入った。
まるでイタリアのナポリ、海が見える場所に建つレストランに来たような雰囲気のある店構えだった。
店の前には幾つか大きなオフホワイトのパラソルを広げてあり、木製のテーブルセットがそれぞれのパラソルの下に並べてある。
パラソルが強い日差しを受け止め反射する姿を、夏が来たなぁと思いながら見て自然と目を細めた。
店構えは、とてもお洒落だし素敵だった。
だが、目に見えないところ、いわゆるプライスレスな部分は、最悪だった。
店に入った途端に生臭いニオイがして思わず鼻先を指でこすった。「いらっしゃいませ」をBGMにかき消されるような小さな声で言われた。
「おひとり……さまですか?」
私をまじまじと眺めて、少し顔をしかめた女の店員。どことなく切れ長の瞳が、少し前に流行った韓国のアイドルグループにいた子に似ていた。
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