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麗らかな初冬の日差しが溢れる教室内。
ただいまの授業はどうやら世界史のようだ。
教壇ではまだ若い、二十歳半ばの黒髪の世界史教師が慣れない教鞭を振るっている。女生徒たちはこの若く、美しい世界史教師にご執心のようだ。
ただ二人を除いては……。
世界史の授業が終わると、その教室内に一人の女生徒の悲鳴が轟いた。しかしクラスメイトたちは慣れたこと。動じる様子はまったくない。
ただ一人、彼女の親友である銀髪の美しい生徒がお決まりの質問をするだけだった。
「弓月……。今日はどうしたの?」
「瑠架っ!!今日も高野の奴!!見た?!」
「そりゃ見たわよ。さっきまで聖先生の授業だったじゃない」
「聖……、高名な僧にだけ与えられる素晴らしい名……。あんなの!高野で十分よ!!」
息巻きそう力説する彼女の名は弓月と言う。長身で短髪の色落ちした茶色い髪、パッチリした大きな瞳に端整な顔立ち。周りにボーイッシュな印象を与える、そんな少女である。
「そんなこと言ったら聖先生のご両親に失礼よ?フルネームにしたら高野聖なんてユーモアのセンスたっぷりじゃない」
そうおっとりと返す少女の名は瑠架。日本人には珍しい銀髪のクセのある長い髪。こちらもパッチリした猫目の美少女だ。左右の耳には十字架のぶら下がりピアスをしている。
弓月と瑠架はこの学校ではちょっとした有名人だ。
さばさばした性格の弓月はその容姿もあいまって、女生徒たちの憧れの的であり、美少女でおっとりした瑠架は男子生徒の視線を独り占め状態だ。
そして彼女たちが先ほどから話題にしている世界史教師の名を高野聖と言う。
彼は今年から教師になった。艶のある黒髪に切れ長の目、その日本人然としたエキゾチックな魅力に、校内の女生徒はおろか、女教師までもがメロメロである。
しかし弓月はこの新米教師がどうしても好きにはなれなかった。
「ぜぇぇったい!!!!化けの皮を剥がしてやるんだから!」
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