二、高野聖

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 授業後、瑠架はある場所へと向かっていた。手には一枚のメモ用紙。そこには、 『授業後、屋上で待っています。そろそろ決着を着けましょう。     高野聖』  と書いてある。瑠架は聖の呼び出しに応じ、屋上へと向かっていたのだ。  瑠架は長く薄暗い階段を上り、厚い金属の扉を開けた。普段立ち入り禁止のこの場所は、しかし鍵が破壊され、久々の訪問者を歓迎するかのようにギィィッと錆びれた音を響かせた。 「聖先生?どこにいらして?」 「ここだよ、瑠架さん」   声のする方に瑠架が向かうと、そこには白いコートを風にそよがせている聖と、その足下にぐったりと横たわる弓月の姿。 「弓月?!」  血相を変えて弓月の元へ駆ける瑠架だが、途中でバチッと電気の壁に阻まれるような強い衝撃を受けてその場に倒れた。 「美しき友情、ですか。ヴァンパイアにもそんな感情があるんですねぇ~」  (あご)に手をあて、皮肉っぽく言う聖を瑠架は立上がりスカートのホコリを払いながら睨み上げた。 「ヴァンパイア?私が?」 「この結界に触れられないのが、貴女(あなた)がヴァンパイアと言う何よりの証拠ですよ」 「そう……」  自分を阻んだ見えない壁の正体を知った瑠架の瞳が鮮やかな朱色になった。白い肌はますます白く、青い血管がうっすらと見えている。 「美しいですね……」  うっとりと眺めている聖を目の前に、瑠架は無表情に口を開いた。 「弓月を、放しなさい」  しかし聖に動じる様子は全くない。それどころか結界の中ギリギリまでゆっくりと歩いてくる。 「結界の外には出られなくて?やっぱり私が怖いのかしら?」 「美しい花には(とげ)がありますからね」  瑠架は聖に感づかれないように西の空へと目をやった。初冬なので真夏に比べて日が落ちるのが早い。あと30分ほどで完全に日没だ。瑠架は聖を見据えた。 「あなたの目的を聞きたいわ。ヴァンパイアの私に、何の用?」  聖は待っていたと言わんばかりに口許の笑みを深くした。 「私はね、ヴァンパイアに魅せられているのですよ」  そしてインターネットから印刷してきたのであろう、画像の荒い白黒写真を取り出した。 「ここに写っているのは間違いなく瑠架さんでしょう?」
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