ハートブレイクストーカー

5/8
前へ
/8ページ
次へ
「黙ってればハンザイシャにならなかったのに」  黙っていれば、あの奇行の数々は闇に葬られて分からなくなる。先輩は当時からわざわざ犯人探しをしなかったし、本当に記憶の一部として流されていただろう。 だから、嫌だった。 「先輩が卒業したら、私は後輩でもなんでもない、先輩にとってただの一般人になるんですよ!」 「うん」 「だから最後に全部ぶちまけて、先輩の頭に残ってやろうと思ったんです!その辺の女達と同じラインに立つくらいなら、先輩の消えない傷になってやろうって!なのに!」  なのに。先輩は意に介してくれなかった。何の傷にもなれなかった。私のしてきたことは足りなかったのか。それでもあれ以上は無理だった。先輩が大好きだったから、先輩が心から悲しむようなことは出来なかった。子供のままごとだったんだ。私にとっては充分酷いことだったのに。先輩にとっては何も引っかからないくらい、忘れて卒業してしまえるくらい、ちっぽけなことだった。 「先輩、私のこと特別に嫌いになってくれますか」 「無理」 「ここまで捨て身でいったのに…酷い…」  先輩の世界のモブ爆誕。というかずっとモブ。嫌いになるのも断られた。普通なんかいらないのに。嫌いになってくれた方がよっぽど嬉しかったのに。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加