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「黙ってればハンザイシャにならなかったのに」
黙っていれば、あの奇行の数々は闇に葬られて分からなくなる。先輩は当時からわざわざ犯人探しをしなかったし、本当に記憶の一部として流されていただろう。
だから、嫌だった。
「先輩が卒業したら、私は後輩でもなんでもない、先輩にとってただの一般人になるんですよ!」
「うん」
「だから最後に全部ぶちまけて、先輩の頭に残ってやろうと思ったんです!その辺の女達と同じラインに立つくらいなら、先輩の消えない傷になってやろうって!なのに!」
なのに。先輩は意に介してくれなかった。何の傷にもなれなかった。私のしてきたことは足りなかったのか。それでもあれ以上は無理だった。先輩が大好きだったから、先輩が心から悲しむようなことは出来なかった。子供のままごとだったんだ。私にとっては充分酷いことだったのに。先輩にとっては何も引っかからないくらい、忘れて卒業してしまえるくらい、ちっぽけなことだった。
「先輩、私のこと特別に嫌いになってくれますか」
「無理」
「ここまで捨て身でいったのに…酷い…」
先輩の世界のモブ爆誕。というかずっとモブ。嫌いになるのも断られた。普通なんかいらないのに。嫌いになってくれた方がよっぽど嬉しかったのに。
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