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ハートブレイクストーカー
「卒業式の日に呼び出しなんて、すっげ告白みてえ」
彼は無神経だ。夕暮れの教室、誰もいない校舎。黒板には先輩のクラスの人達が書いたお別れのメッセージ。私は卒業式の日、大好きだった部活の先輩を呼び出した。今から私が本当に告白すると言ったらどうするつもりだろう。けらけらと笑う彼から本音は全く読み取れない。ただ何も考えてなくてそう言っているのだとしたら、よっぽど大物だ。
「すみません、忙しい時に」
「いーや?世話になった大事な後輩の頼みだしな」
先輩の胸ポケットに刺さった花は、私と彼を引き裂くものだ。先輩はどうして笑っていられるのだろう。私は今にも泣き叫びたくてたまらなかった。長い長い一年間を、先輩がいない場所で過ごすなんて。先輩がいたことを思い出しながら過ごすなんて地獄でしかない。先輩のために私は、この部活に入ったのに。
まあ、答えは簡単だ。先輩と私の気持ちは全くもって釣りあっていないから。先輩は私のことを特別視しているわけじゃない。私すら、先輩にこの重い感情を見せていない。そんなもの、この鈍感で無神経な先輩に分かるわけがないのだ。
「先輩」
「何?」
「私はあなたに、謝らなきゃいけないことがあります」
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