いざ死の不知へ

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見渡せば君の思い出だらけ。 なんという煩悩にまみれた部屋。 私に処分出来る筈もない。 だからといってもう明日の希望もない。 もういいんだ。 不惑の40歳。十分生きた。十分疲れた。 よし死のう。 私はATMから60万程現金を下ろしてきて玄関に置いた。よろしくお願いいたします。 と遺書を書いて。 二日後によろず清掃業者に「掃除」をお願いする予約を取り付けた。死後24時間以上経たないと火葬場で遺体を焼く許可が降りないようなので。 私の遺体の腐食が始まると厄介だろうから。 洋服はすべてビニール袋に入れて、東南アジアへ寄付をお願いいたします、と書き置きを残した。 薬もある。ウォッカもある。 死に仕度は調った。 いざ死の不知へ 私は三週間分の睡眠薬をひたすらボリボリかじり続けた。こんな時にもOD錠の睡眠薬はとってもやさしく甘い。 ウォッカをぐいっとやる。 熱い なんだこれは!? こんなもの飲んで何が楽しいんだ? 顔も知らぬロシア人の飲んだくれを訝った。 とにかく体に流し込みグラグラっと目眩がした。 さあいよいよさよならだ。 私はタンスにしまった君とのツーショット写真を枕の下に置き横たわった。 最期の未練か・・・。 怖くはない、舌は甘い、喉は熱い。 この世界とお別れだ。 三途の川の渡し賃は六文銭だと言うが現代では円相場なのだろうか?アルバイトでもして稼ぐ所があるのだろうか? もうそんなどうでもいいことを考えた途中で私は事切れた。
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