少しの老いと孤独

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タンス。 なんのへんてつもないただの収納タンスだが、私には忘れられない思い出がある。 君の苦しむ姿だ。 ある時、君は突然「お腹が痛い」と苦しみだした。 激痛に曇る君の顔。忘れはしない。 「救急車、救急車を呼ばなければ!」 と焦った私は電話を手に取り「117」 と押した。 「ただいまより午後9時25分40秒をお知らせします・・・」 嗚呼なんということだ!時は一刻を争うのに! 必死に珍妙なことに勤しんで居る私に君は苦悶の表情を浮かべて君は言った 「大丈夫、いつものことだから、ただの生理痛、水と早織のバッグから薬を取って」 わたわたしていた私は水にコップ、いやコップに水を入れて彼女の血のような赤色のバッグから薬を取り出した。 飲ませる、が彼女の痛みはいっこうに治まる様子がない。 女の生理。まさかこれほどの痛みを伴うとは・・・。 さっき時報を聞いてしまったことは永遠に黙っていよう。
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