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裏口からビル沿いに歩き、金木犀の植わった駐輪場を抜けると、桜並木へと出る。
春はライトアップされて人も集まるが、冬の夜は街灯もまばらで閑散としている。
「うん? 俺はどこに連れ込まれるの?……これ」
先輩は手を引かれながら、冗談ぽく呟いた。
「……その、別に先輩を避けてるんじゃなくて……この間は嬉しかったです……ただ、言えないことがあって」
「知ってる。木田と何か探ってるんだろ? バレバレ」
「え……」
桜を背に、スーツの袖口から手を取られる。そうして、そっと、手の項にキスされた。
「…あ、あのお?」
そのまま、目が悪戯に笑う。
「で、こんな現場を撮られたって?」
「なんでそれを知ってるんですか!」
「真田さんから聞いた。土橋さんと帰った時の写真が自宅の郵便受けに入れられてて、架純にも届いてるんじゃないかって。でも、潔白だからって」
「あ……」
だめだ、いくら真田さんが潔白といってもあんな写真見られたら……嫌われる!
青砥先輩の手がすっと離れて急に温もりが消える。
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