優しい嘘悲しい嘘

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そんな関係だったのに、お互い41歳の冬、寒さのせいだったのだろうか彼女から「久しぶり~♪」というメッセージが届いたのだ。 私は彼女の異変を察した。 それからの現在だ。彼女の美しかった黒く張りのある髪はおそらく抜け落ちたであろう、毛糸の帽子があてがわれていた。 眼は窪み、くまを帯びて私が知っている世界一美しい遼子はどこにもいなかった。 おそらく、綺羅星の如く彼女とまぐわった男どもは性的魅力を失なった彼女に愛想を尽かし脱兎の如く後を去ったのであろう。 なにもかも失なった彼女が最後に便りを送った最下位の男が私だったのだ。 それでも私は会社を辞め、大阪の安アパートを借り、介護の夜勤専の仕事をしながら昼間は毎日彼女を見舞いに行った。 やっと!ついに巡ってきた遼子との時間 逃す手はない。 20年数余年もの間、全く歯牙にもかけられなかった男として見られなかった私と遼子の交わりがついに火蓋を切った。
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