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「二度と無いわよ」
「顔でいい」
「え?」
「顔で良いから触れさせてくれ」
「そんなんでいいの?相変わらずつまらない男ね」
遼子は呆れたようだった。
私は答えた。
「イランカラフテ」
「何?」
「イランカラフテ」
「だから何よそれ?」
「アイヌ語、『あなたの心に触れさせて下さい』という意味」
「ばっかみたい、そんなのどうだっていいから触りたいなら触りなさい」
私は初めて遼子に触れた。
かつて世界一「美しかった」彼女の顔に。
私はさっき嘘をついてしまった。
優しい嘘?悲しい嘘?
たぶんどっちも。
遼子の変わり果てて窪んだ顔に、それでも温もりを感じながらそんなことを考えていた矢先それは突然来た。
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