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序
「ごめんね、ほかに好きな人がいるの」
ずっと好きだった憧れの先輩に、意を決して想いを告げた結果がこれだった。
知っていたことだ。彼女がぼくを想っていないことも、ほかに好きな人がいることも。
ずっと見ていたのだ。それくらい知っている。それくらい──分かっている。
「悲しいなあ……」
もっと胸が苦しいのだと思っていた。
もっとずっと涙が出るのだと思っていた。
「死にたいくらい」
覚悟していたからなのだろう。
彼女の想い人がぼくでないことも知っていた。
告白してフラれることも分かっていた
何回も頭の中で繰り返して、了承してもらったり、断られたり──現実では後者になる。しかしそのことを知っていて、「でも、もしかしたら」を止められなかった。
「ちなみに……」
ぼくは口を開けた。
もしかしたらこれが、この人との最後の会話になるかもしれないと思いつつ。
「ぼくのことを、どう思っていますか?」
彼女は少しキョトンとした。
フッた相手から問われる質問ではないだろう。
でも、やや考えてから、フッと微笑んで、
「好きだったよ──男性としてじゃなくて、男の子として」
──かくしてぼくはこの瞬間、完膚なきまでに失恋した。
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