運命の日

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運命の日

まさかの三度目の核が落ちる瞬間。 世界中が戦慄したあの時。 閃光が走った。 目を灼き尽くすと思われるほどのそれは、核の光ではなく。 その、強烈でありながら妙に柔らかな光によって、核は消え失せた。 喜びは束の間。 世界中に響き渡る不吉な音楽。終末の音色。 胸に突き刺さる重厚な音楽が、空から降ってくる。神を讃える歌が、その音楽を伴奏に全ての人間の耳に、脳裏に、胸に響き渡った。 「天使が歌っているよ。」 誰かが歓喜の声をあげた。 そして、次の瞬間には絶望の悲鳴が。 空一面に無数の天使が。ある者は楽器を掻き鳴らし、ある者は歌い続ける。 初めてみる天使は、地上の何よりも美しかった。 美しいが故に、残酷に笑うその姿は何よりも恐ろしい。恐ろしく、残酷な、冷たく美しい笑みを浮かべた一部の天使(それ)は無造作に選んだ人間から生き肝を引き抜いた。 そうして。ああ、そうして。 滴る血をすすり、喰らい尽くした。 「主は仰せになられた。もはや、お前たちに生き延びる理由は無い、と。」 われらの進化の糧になるには、お前たちはケガレ過ぎた。 代わりは用意した。塵芥へ返るが良い。 だが、まあ喰ろうてやっても良い。進化は出来ずとも、腹は満たされる。     
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