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それでも、町の外には危険が溢れている。怪物に身を堕とした天使どもが、徘徊しているのだから。町の中にいることで、メサイアに保護して貰えるのだ。
「だってなあ、おれも外に出てみたいんだ。」
「…まあ、分かるけどさ。」
元気の有り余る少年たちには、塀に囲われた町は狭すぎた。良く似た二人、カインとアベルは双子の兄弟だ。狭い町のなかを縦横無尽に駆け巡っては、時々外の世界に思いを馳せる。
「兄ちゃん、どうしてるかなー。」
アベルは空を向こうを見詰めて呟いた。彼らにはもう一人、兄がいる。年が離れたその兄は16才の時に夢を見て、そうしてメサイアの一人になった。
「…そうだな。元気だといいな。」
メサイアのメンバーにさえなれば、外に出られる。というよりは、外にでなくてはならない。怪物狩りは彼らの重要な任務でもある。
任務や任務地は、組織が決める。カインとアベルの兄は、討伐隊に編成されたため、滅多に帰ってこない。
「おれも、兄ちゃんみたいにメサイアになりてーな!」
「夢を見れなきゃ、なれねーだろ。」
「そーなんだよなー。夢、おれも見たいなー。」
「そうだな。」
何度か、二人で町の外に出て冒険してみようと試みた。その度に、なぜかメサイアに見付かってこっぴどく叱られるのだ。それでも、外の世界は諦めきれない魅力を放ったまま。
閉じられた世界は、平穏だった。
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