第2章 小説

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第2章 小説

約束の明後日がきた。 今日も、昼までの講習。だけど、珍しく眠たくなかった。 この後、千夏さんに会うからだ。 あの時は普通に返事をしてしまったが、よくよく思い出せばかなり可愛い顔だった。 それに、多分年上だ。見た目では同級生といってもわからないレベルだが、話していた時に大人の雰囲気を感じた。 大人は時に、大人を見せるものだ。 講習が終わり急いで本屋に向かう。 遅刻しかけてるわけではない。ただ、早く着きたいのだ。 早く、本屋に着いて、後から来る千夏さんを余裕なふりして待っていたくなったのだ。 本屋が見える道に出た時、すでに千夏さんは本屋に着いていた。どうやら僕を探してるみたいだ。すごくきょろきょろしている。 俺に気づいた千夏さんは、大きく手を振って出迎えてくれた。 「ごめんなさい、待ちましたか?」 「ううん。私も今来たところ。それより汗すごいよ?そんなに急いだの?」 笑いながらハンカチで額を拭いてくれた。 いきなりのことで、びっくりして体を数歩下げてしまった。 「あ、ごめん。嫌だった?」 「ち、違います。いきなりだったからびっくりして。」 女性にそんなことされたことないから、すぐに赤面してしまった。 「それより、千夏さん。本は…?」 「あぁ、忘れてた!はい、どうぞ。」 差し出された四角いものは、綺麗にラッピングされていた。 「あの、これ、ラッピングですか?」 「うん、そうだよ?譲ってくれたからせめてものお礼。渡すときぐらい新しい感じがしたほうがいいじゃない?」 変なところに気を使う人なんだなと少し笑ってしまった。 「なんで笑うのよぉ、、、」 恥ずかしそうに、髪を耳にかけながらそういう彼女を見て 僕は思いもよらないことを口にした。 「千夏さん。連絡先を聞いてもいいですか?」 言った後、後悔した。こんなガキに連絡先なんか教えてくれるわけないだろ。そんなの迷惑に決まってる。 そんな事を思いながら、顔を伏せている僕に、千夏さんはカバンを漁りながら、 「いいよ。QRコード出すから待ってね。」 へ?今なんて?いいよって言ったのか? 「えぇ!いいんですか!?」 「えぇ!なによ!?連絡先欲しいのでしょ?あげるわよ、減るものでもないし。」 こういうところが、どこかサバサバしてるというか、 見た目と違って大人に見えてしまうのだ。
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