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なんの造作もなくただ、スマホにスマホをかざすだけ。
それだけで、人の連絡先を自分のものにできるのだ。
ピンクのクマのアイコン。いかにも、女の子らしい画像だ。
俺のLINEにはあいにく友達が少ない。あまり、社交的ではないし、人見知りもする。
放課後、友達とご飯に行くことも、ショッピングをすることも、したいと思わないし誘われても行かない。
「駿くん、友達少ないね。」
「容赦ない一言ですね。少ないですよ。けど、それで困ってないですしさほど問題ないです。」
「ダメだよ。もっと学生を満喫しなきゃ。」
「なんでですか。千夏さんもまだ学生でしょ?おばさんみたいなこと言わないでくださいよ。」
そうバカにするように言った後に、千夏さんの顔が少しだけほんの少しだけ、曇ったあと、
「あたしは、ほら…、小説読むのが趣味だから。学生の趣味に感じないでしょ?高校生なんか若さで満ち溢れてるんだから、駿くんはあたしみたいにならないでほしいの。」
一瞬見えた、悲しそうな顔と元の優しい顔。
そんなに、高校生活を楽しむべきなのかと思いながら、僕にも趣味と言える物が1つあることを思い出した。
「あの、俺、小説をか‥‥」
と言いかけた時、店長が横入りして話しかけてきた。
本当に間が悪いんだこの人は。
「そういやよ、駿。こんなチラシが届いたんだが興味ないか?」
なんですかそれ?とその紙を見る千夏さんと
なぜか誇らしげに僕を見る店長と
趣味を話すことを邪魔された僕は
真夏の昼中、一枚のチラシを覗き込んだ。
【○○社主催 夏季小説コンクール】とカラフルな文字で書かれている題名の下を店長が指を指す。
「ほら、ここだ。対象年齢が高校生以下、それに最優秀賞は賞金50万、優秀賞でも10万だ。どうだ、駿。お前小説書いてただろ?」
ばかー!!!なんであんたがそれを暴露するんだ!!
「え、駿くん小説書いてたの?」
驚いた顔をしてそう問いかけてする千夏さんに
「えぇ、まぁ。本当に趣味程度なんですが。」
引かれたか?小説好きの小説家なんて山ほどいるが、凡人のそれはかなり恥ずかしいと自分で思う。
バカの店長のせいで、良からぬ形でバレた僕の趣味はこのコンクールから始まる物語のキーになっていくことを、
ここにいる三人は思いもしなかった。
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