第3章 書きかけ

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第3章 書きかけ

「でもな、店長。このコンクール、恋愛小説のみってなってるぞ?俺はそんなもの書いたことない。」 「だったらこれを機会に書けばいいじゃねぇか。何事も経験だぞ。」 独身の男にそんなこと言われるとは思わなかったが、店長も経験を積んだ果てに今の状態を望んだのか。 「うーん。恋愛かぁ。まともな恋愛もしたことないんだけどどうすればいいんだ。まったくアイデアが浮かばないぞ。」 「確かにな、お前はそういうタイプじゃない。」 どういうタイプだよ。てか一言多いんだってば。 「そうだ!千夏ちゃんに手伝ってもらえよ。いいだろ?千夏ちゃん。」 「へ!?私ですか!?わ、私もあんまりそういう経験ないんですけど‥駿くんとなら行ってもいいかも。」 「おぉ!いいじゃねぇか!2人でデートしてこいってんだ。移動代ぐらい出してやるからよ!」 そう言いながら、財布から取り出した諭吉を千夏さんに握らせている店長はどこか楽しそうに見える。 「い、いえ、移動代は自分で出せますしこんなに必要じゃありませんよ!」 「何言ってんだ、余った金は夜の営みにだな‥」 「オッケー!もういいよ!わかった!これは貰っていく!ありがと店長!!」 お礼の言葉を述べながら遠慮なくみぞおちにストレートをお見舞いした。 「おぉ‥いつのま、にここまで強く‥」 地面にうずくまりながら漫画のようなセリフを話す店長を無視して千夏さんの腕を引く。 「とりあえず、ここじゃ話しにくいしカフェにでも行きましょう。まだ書くって決まったわけじゃありませんし。」 「店長さんほっといていいの?かなり苦しそうだけど。」 「いいんですよ、あんな変態。少し痛い目を見たほうがいいんです。」 ふふっ、なにそれと笑いながら 「じゃあどこのカフェ行こっか!」 と嬉しそうに話しかける千夏さんを見て、こういうのがカップルなのかなと少し照れてしまう。 店長ごめんな、そしてありがとう。 そう心でつぶやいて、自転車を押して歩こうとした時に 「ねぇ、二人乗りしたらダメかな?」 「え、俺と二人乗りですか?多分汗臭いですよ?」 「いいの!まさか、こんな暑さの中女の子を歩かす気? もう、小説のための準備は始まってるの!」 「だからまだ書くって決まってませんから!」 そんな言い合いをしながら千夏さんとした二人乗りは 暑さを忘れるぐらい、夏の涼しさを目一杯吸い込めた。
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