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夏の日差しの強い午後二時になるかならないかだった。
病棟八階の食堂窓際。
私はパーソナルスペースに入り込んだ一人の中年男性を見上げた。
私の他には二、三組の面会に来た家族がテーブルにつき談笑しているのみで、他にもテーブルは余っていた。
「こんにちわ。 いいがな、ここ」
目の下に隈のある、顔色の悪い中年の男性。
「……ドウゾ」
私は許可を出した。入院生活が長くなれば、会話も少なくなり人恋しくなるものだ。
ただひとときの談笑が始まるのか、程度にこの時は思っていた。
彼が『彼女』の話をするまでは。
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