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カウンターの内側から撮られたように見えるその一枚は、照明として置かれたランタンに照らされた男女がグラスを合わせて見つめあっているものだ。
ほのかな明かりだったけれど、相手に微笑んでいるのが僕の妻だってことは容易に知れた。
「じきに一本空けて帰りそうな雰囲気です、だとさ」
「どうかな」
槙野がつまらなそうに僕を見たのと同じタイミングで、僕の携帯にラインが届いた。
『お芝居の休憩中に大学の頃の友だちに会ったの。
話が尽きそうにないから、芝居終わりにちょっと飲んでくるわ』
「まあ、怖い」
おどけてみせる槙野の携帯が鳴った。
妻の連れがタクシーを呼び、二人が連れだって出て行ったという報せだった。
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