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ほっとしたのか、流玲の顔がほころぶ。キザムのよく知る流玲の笑顔だったが、今はその笑顔を見ても喜ぶ余裕はない。
「う、う、うん……ほら、クラス委員長だからさ……」
会話を上手く合わせながらも、話の終わらせ方をさっそく模索し始める。
「土岐野くん、いつもこんなところでひとりで食べているの?」
「う、うん、いや……今日はなんとなく、屋上で食べたい気分で……。それに、ここなら静かだしさ……」
流玲の雰囲気に飲まれないように、わざと視線を外して話を続けるキザム。
「へえー、そうなんだ。それじゃ、わたしも今度、屋上でご飯を食べてみようかな。それとも、土岐野くんの邪魔になっちゃうかな?」
流玲の言葉からは、キザムに対する優しさが溢れていた。だからこそ、キザムは今すぐにでもこの場から立ち去りたかった。これ以上流玲の声を聞いていると、この場を離れるのがもっと辛くなると分かっていたから──。
「わたしも静かにお弁当を食べるから、それならいいでしょ? それとも、やっぱりダメかな──」
可愛らしく小首を傾げてキザムの返事を期待する流玲。
「そ、そ、そうだ……。ぼ、ぼ、ぼく、《薬》を飲まないといけないんだった!」
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