終章 エンド・オブ・ザ・デッド ~死者の結末~

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「つまりね、《ステップ細胞》を使った遺伝子治療を受けたぼくと、《スキップ細胞》を使った遺伝子治療を受けた流玲さん──ぼくら二人の体内に存在する異なる遺伝子が、二人の粘膜を通して接触したことによって、流玲さんの体内でゾンビ化の発生が起きたんだ。あの日、ぼくと流玲さんは、その、つまり……粘膜を合わせる行為をしたというか……えーと、どう説明したらいいか……」 自分の口から直接キスしたとは言い出せずに、つい口ごもってしまうキザムだった。 「そうだよね。わたしたち、あの日──キスしたんだよね」 キザムよりも先に、流玲がはっきりと言い切ってくれた。 「う、うん……そ、そ、そうなんだよ。ぼくもそれが言いたかったんだ」 「でも、あのキスがすべての元凶だったなんて、まだ信じられないけど……」 「ぼくも最初は自分の勘違いだと思ったよ。だけど、それ以外の可能性はもう残っていないんだ。ぼくはそのことに気が付いたから、この世界にまたタイムループして舞い戻ってきたときに、ある決断を下したんだ。それが──」 「わたしとの接触を意図的に避けることにしたんだね。わたしとキスしないようにする為に──」 流玲が先回りして答えてくれた。 「ぼくには他の方法が思いつかなかったんだ。物理的な接触を避けるのが一番手っ取り早いと思ったから……」 「それでキザムくんは入学式の後から、わたしが話しかけようとしても、いつも逃げていたんだね」     
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