104人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん……ごめん……。決して、流玲さんのことを傷付けるつもりはなかったんだ。ただ、この世界をゾンビカタストロフィーの脅威から救う為には、流玲さんと距離を置く必要があったから……。でも、結果的に流玲さんのことを傷付けてしまったのならば謝るよ──ごめんね」
キザムはその場で深く頭を下げた。そうして、再び頭を上げたとき、キザムはこれまでにないくらいの硬い表情を浮かべたまま、流玲の顔を切ない眼差しで見つめた。おそらく流玲とこうして面と向かって話をするのは、これが最後になるはずだから──。
「ぼくの説明を聞いて分かってもらえただろう? だから──ぼくはこれからずっと流玲さんとは距離を置くつもりだ。こうして会話をすることも、もうこれで終わりだから」
それがキザムの出した答えだった。それは世界を守る為の答えでもあった。
「それじゃ、ぼくは教室に戻るよ。これからは校内で会っても、絶対にぼくには声を掛けないで欲しい。何かのきっかけで飛沫感染が起きるかもしれないからね。ぼくも流玲さんには声を掛けないから」
敢えて突き放すような口調で言うと、今度こそキザムはゆっくりと歩き出した。言葉もなく俯いてしまっている流玲の脇を、無言のまま通り過ぎていく。
最初のコメントを投稿しよう!