終章 エンド・オブ・ザ・デッド ~死者の結末~

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これでもう流玲に声を掛けることは二度とない。どんな些細なことであろうと、二人が少しでも接触したら、その時点で世界はゾンビカタストロフィーの脅威に晒されることになるのだ。流玲もきっとゾンビカタストロフィーの脅威を知り尽くしているはずだから、キザムが出した結論に異を唱えることはしてこないはずだ。キザムはそう考えていた。 これでいいんだ。これしか方法はないんだから。これでいいんだ。これで、これで──。 背中に痛いほど流玲の視線を感じる。でも、もう二度と振り返らないと決めている。だから、キザムは黙って屋上のドアを目指して歩みを止めずに進んでいく。 涙が頬を伝い落ちていったが、その涙を拭うことはしなかった。ここで自分が泣いていることを流玲に悟られたくはなかったのだ。自分が泣いていると知られたら、流玲の気持ちを鈍らせることになると思ったのである。 やっぱり、ぼくにはハッピーエンドは似合わないんだ。世界を救う為には、このビターエンドを受け入れるしかないんだ。 キザムがそう思ったとき、不意に右肩を強く引かれた。その勢いのまま身体が振り返ってしまうと、目の前には流玲が立っていた。キザムのことを追いかけてきて、引き止めようとしたのだろう。 「なが──」 名前を呼ぼうとしたが、もう流玲とは関わらないと決めたことを思い出して、慌てて言葉を飲み込んだ。すぐにそのまま振り返ろうとしたが、そのとき、流玲が突然信じ難い行動に出た。     
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