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キザムの唇と流玲の唇がしっかりと触れ合った。
きっと第三者がその光景を見たならば、仲の良い恋人同士がよくするキスに見えたかもしれない。しかし、二人にとってのキスは、危険極まりない行為でしかなかった。
二人がキスすると──世界にゾンビカタストロフィーという名の破滅をもたらしてしまうのだ。
それにも関わらず、流玲は自らキスをしてきた。その真意がキザムにはまったくもって理解出来なかった。
「な、な、流玲さん……ど、ど、どうして、キスなんて……? だ、だ、だって……ぼくらがキスをしたら……ゾンビ化が起きて──」
気が動転し狼狽しまくるキザムを前にして、流玲は小さくゆっくりと首を振った。
「大丈夫だよ、キザムくん。わたしたちがキスをしても、何も起こらないはずだから──」
はっきりと流玲はそう言い切った。何も起こらないと──。
「えっ、なんで……? だって、急にそんなこと言われても……信じられないし……」
余りにも突飛な行動と発言をする流玲の態度に、キザムの頭は大混乱に陥ってしまった。てっきり流玲は自分の話を理解していなかったのかと疑ってしまった。
戸惑うキザムに反して、流玲の方はいたって落ち着き払った様子だった。
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