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「あのね、キザムくん。前に授業中にキザムくんが気分が悪くなったときがあったでしょ? そのときのことを覚えている? あっ、この世界ではなくて、前の世界での話だよ」
唐突に流玲がそんな話をし始めた
「う、う、うん……それは、覚えているけど……」
前の世界で、キザムは授業中に体調を崩してしまい、保健室のお世話になったことがあった。そのときはまだ高校生活に馴染めずにいて、気ばかりが焦ってしまい、熱を出してしまったのだ。
そういえば、あのとき保健室に付き添ってくれたのが、クラス委員長を務める流玲さんだったんだよな。それがきっかけで流玲さんと話をするようになったんだけど──。
高校に入学したての頃の記憶が少しずつ蘇ってきた。でも、決して今話をする内容ではない気がした。今はもっと重大な事態が起きようとしているのだ。のどかに思い出話に花を咲かせている場合ではない。
「もちろん、あのときのことは本当に感謝しているよ。でも、今はそんな話をしているときじゃないから。だって、ぼくらがキスをしたということは、流玲さんはゾンビ化しちゃうっていうことで──」
「だからね、キザムくん。あのとき保健室で横になっていたキザムくんに、初めてキスしたんだよ、わたし──」
まるで、今日は天気が良いね、と世間話でもするかのような軽い口振りで、さらっと重大な秘密を流玲は打ち明けてきた。
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