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いつのまにか枷門 仁は眠っていた。寝ているという自覚があるのはかつての穏やかな生活の風景が目の前にあるからだ。
「麗華……」
なにものにも代えがたい大切なとても大切な…………
その国は悪政が蔓延り貧富の差が激しくなりつつあった。不満は民衆に充満し、やがてはじけ革命が起きた。
暴徒化した民衆は政府機関を襲い裕福な家を襲い富を強奪し弱い者を陵辱し尊厳を踏みにじり命を奪った。
枷門 仁の大切なものもすべて消え失せた。
「覚えているとも……」
絶望し人間への憎悪に身を委ねようとした枷門 仁を彼女の最後の言葉が止めた。
「世界を護る。大切な人々が生きていくこの世界を」
枷門 仁は甘い夢を振り払い意識を上層にシフトすべく切り換えた。
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