Spoliatio(略奪)

7/8
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
 濃い霧の中でも視認できるほど蜘蛛と蜘蛛の吹き出したものが集落の建物を覆っている。シスター美那はかつて住人であった者達によって教会の中に捕らわれていた。 「困りました。介入者が現れました」  神父サイモン=バークレイはシスター美那を見上げてため息をついた。  天井の巨大蜘蛛二匹が腹からだした糸で教会内にせっせと巣を作っている。そのうちの何本かの太い糸に両腕を巻き取られシスター美那は宙吊りにあっていた。 「……ふぅ、もう一度聞きますがナコティカの欠片はどこです?」 「…………知りません。ここは神の家です。悪魔よ、立ち去りなさい!」 「立場がわかっていないようですね」  礼拝堂に集落の女性達が次々と入ってくる。 「人間はね、貴女を含め数名しかいませんよ」  パチッ!  神父が右手の指を鳴らすと女性達が上半身の衣服を脱ぎ捨てた。両腕をだらりと下げ前屈みになりうつむき、表情の見えなくなった彼女達の口から人とも獣ともつかぬ唸り声が漏れでる。 「ケケケイイイ……ンンンガガニヤア……ヤニヤニ……¤₢₤₥₴₳……ヤニヤニンンン……₡₡₡₠₫……イイイアアイ……イアイア……」 「……うそっ……」 「ヒヒヒヒヒイイイイイイ……アアイアアイ……ケフケフフヒヒヒイイーーー!!」  絶叫するとバタバタと倒れ伏し四肢が痙攣したかと思ったそのとき、背中の皮を突き破り毛むくじゃらの脚が胴体が紅くひかる4つの目が、どこに収まっていたのかというくらいの巨体があらわれ礼拝堂を埋め尽くした。 「キキキキケケケケケケイイイーー!!」 「いやっ、嫌ぁぁーーーーーー!」  シスター美那の顔が恐怖にゆがむ。神父は楽しそうに両腕を高く大きく広げ聖書の一節を謳うように唱える。 「貴女は我が神、私は貴女に感謝します。貴女は我が神、私は貴女を崇めます。主に感謝せよ。主は恵みふかく、その慈しみは絶えることがない!」    旧約·詩篇118篇28~29節より 「我らが神は母たるアトラク=ナクア、讃えよ! 橋の一つはじきに完成する。我らが母を讃えよ!」
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!