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四人は集落中央の公民館前の広場で蜘蛛に囲まれていた。
「多勢に無勢ってやつだな」
「兄ちゃん、他人事みたいにいうな」
「だってなぁ、弾切れだし……」
「ほら、お兄ちゃん早く穴開いて弾薬取り出してよ」
「俺の事務所の在庫は使いきった。どこからでも持ってこれる訳ではないのよ」
「どうするんだよぉ!」
「さて……」
仁はこちらを取り囲んでいる蜘蛛の数を数える。襲いかかってくる気配がない。何かを待っているように思われる。
「ざっと十五、まだ化けていない女を含めると二十二……」
「ミコヨ……マダシュカイトトリマキガベツニオル……」
「それまでは奥の手は使いたくないがな…………そうも言っとれんかな?」
「ヨバヌノカ?」
「タイミングがなぁ?」
蜘蛛に動きがあった。群れが左右に別れ取り巻きを連れて神父サイモンが姿を見せる。遅れて若い娘が二人で全裸の娘を神父の横に連れてきた。
「まだ生きておられましたか。枷門 仁さん」
「なんとかな。子供がいるんだ刺激の強いものを見せるなよ。思春期前だぞ、曲がったらどうする?」
「おや? 気づいていませんか? そこの子供も老人も星氣体で実体はありませんよ。すでに老人は半分死霊ですしね」
「…………」
二人が愕然とした表情になる。
「記憶にないようなので教えてあげましょう。そちらのご老体は教会を守っていたシスターを手にかけた際に間の悪いことに地下室に入って来たので死んでもらいました。誠くんは遺体の処分の最中を目撃されたので追いかけたのですがね、崖から海に墜ちて沈んだのですよ」
神父がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。
「余計なことを……」
「失礼、気づいておられたようで……」
「儂は死んでいるのか……」
「それはさておき、誠くん質問があります。ナコティカの欠片はどこです? 古い文字の刻まれた石板の欠片です」
「ボク知らない」
「そうですか? ではお姉さんが嘘をついているということですね。そうですか、ひとつせっかくなので面白いものを観せましょう」
全裸の娘が神父の前に引き摺り出される。
「あなたがくる少し前に迷いこんできた女子大生でしてね。充分楽しまさせて貰いましたので仲間にしてあげようと思いまして……」
神父は怯える全裸の娘をうしろから抱きしめ、首筋に舌を這わせると右手を秘所に挿し込み嬲る。
「てめぇー!」
「意外と熱い方ですかな? 観なさい誠くん、ナコティカの欠片を渡さないとお姉さんもこうなりますよ」
神父はそう言うと大きく口を開き唸り声をあげた。喉の奥から二本の黒みがかった紫色の牙がせりだしてくる。
「イスァヤニィ! ナクア! イア!」
二本の牙は娘の首筋に突き立てられた。ドクドクと何かが注ぎ込まれている。娘は白眼を剥き地面に倒れ伏すと痙攣してのたうちだした。
「いやぁ! 死にたくない! いや、いやぁーーー!」
「確率は今のところ六分の一です」
背中が赤黒く盛り上がってくる。
「成功のようです。なに、すぐに精神面も我々と同様になります」
仁は天を仰ぎ怒りの表情で叫びはじめた。
「……イア!イア! ハスター!ハスター! クファャク!ヴルグトゥム!ヴグトゥラグルンヴルグトゥム!」
上空の霧が晴れ星空ではなく漆黒の闇が降りてくる。
「アァィ!アァィ!ハスターーー!」
禍々しき氣が仁から立ちのぼり広場を突風が襲った。
「来たれよ! バィアクィキーー!」
遠くから大型獣の吼え声が聞こえてきた。
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