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女たちが血まみれの顔でにじりよる。威嚇の意味らしき唸り声をあげ、這って近づいてくる。赤黒く盛りあがった背に赤い目が四つ。
「うわぁ!」
「じいちゃん!」
「…………?」
誠が劉にしがみつく。劉は中華包丁を右手で構え、左手で誠の頭を撫でる。
「探偵の兄ちゃんがすぐ来るさ」
トコトコとウムルが前にでる。
「……タノマレタ……」
ウムルは女たちに掌をかざすと呟く。
「イクイ! ドロシェ! オドフクロンク!」
女たちどころか天井の蜘蛛までもがウムルの言葉に縛られ、前進を止め後退しはじめる。
「……マタ、青椒肉絲ヲタベタイ……ホカノリョウリモタベタイ…………焼売、餃子、小籠包……」
涎がでている。
「……ミコトノヤクソク……図書館ニツレテイク……チュウボウヲマカセルノニシナレテハコマルコマル」
ウムルの本音である。
「図書館?」
「……ウッカリシタ…………オコラレル……」
神父がウムルの言葉を聞き、取り乱す。
「今のは神代語? ありえぬ!?」
魔法陣の内側に戻ると古い飾り細工の鞘からナイフを抜きシスター美那に突き付け叫ぶ。
「動くなぁ! イァ、ナクア·ネブルッドヅッン·フダグン! アトラク=ナクア·トナルロ·ヨラナルカ!母なるアトラク=ナクアよ、贄を受け取りたまえ!」
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