12時に約束

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12時に約束

毎日12時きっちりに電話をかける、そう約束したのは高校卒業の時。 幼馴染でずっと一緒の道を歩んで来たのに急に医療の道へ行くとこの街を飛び出してしまった。 私は彼が好きだったから悲して寂しくて毎日電話してと約束をした。繋がりを切ってしまわないように…。告白する勇気なんてその時はなくて唯一繋げとくのは電話、メールだけだった。 「もしもし?」 「あぁ、ごめんもう12時だったね気がつかなかった。ごめんね」 いつも私が電話をかける。 勉強していて時間を忘れるみたいで、勉強の邪魔するのは悪いなって思うんだ…。 「勉強中だった?ごめんね邪魔して」 「いやいや、休憩も必要だし息抜きになるから大丈夫だよ」 こう言ってくれるから私は甘えてしまう。 小さな優しさに惚れた。 「学校どう?」 「楽しいよ、みんな優しいしね勉強はやりがいある。友達も多くできたし」 「いつもそれしか言わなーい」 「毎日そんな代わり映えするようなことなんてないさ」 「そっか、いいなー」 「そっちはまた上司に怒られてるの?」 優しいくせにそういう時だけはちょっと意地悪になる。 私は地元の飲食店へ就職したのだ。いつも怒られて何か文句を言うのをこうやって聞いてくれる。 「そうだよ!どーせ今日も怒られました!集中しろーとか場所ちゃんと覚えろよとかさーもうちょっと優しく言ってくれてもいーのに」 ぶすくれながら言う私が面白いのかクスクス笑う声が聞こえる。 「何笑ってるのよ!」 「ごめん、けど自分が悪いのはわかっているんだろ?」 「まーね!分かってるから頑張るぞー!って思ってます!」 「でもお前バイトの時もそうやって上の人から怒られてたよなー、可愛がられていると言うのかさ」 「こんなん可愛がられてる訳ないじゃん!」 笑いながらこう言う話をするのは本当に大好きだ。この電話が切れなきゃいいのにって毎回思う。 「勉強頑張ってね!」 「ありがと、じゃあまた… おやすみ」 「おやすみ」 ほんの10分程度の電話、これが私たちを繋ぐ最後の砦。だと思ってた。 今思えば会いに行こうと思えば会いに行ける距離だった。 電車でも飛行機でもなんでも駆使して顔を見て話していれば気付けてあげられた。 長年彼を見てたのに声の変化には気付かなかった…。
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