第2章

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この領地は標高が高く、特産物はワインの原料になるビティスとイェシム絹糸。 現場は切り立った崖を削って作られた細い道で、馬も通れないくらいの難所だった。 これは崩れるよね。幸い巻き込まれた人はいなくて3日に1度の定期便が発見したそうだ。 復旧作業を始めるために必要物資と人材支援を緊急用伝書鳥エンナを飛ばして届いたのが今朝。こんなに速く領主が来るなんて思っていなかったんだろう、配達係の人がめちゃくちゃ驚いている。驚かしてごめんね? 「状況は?」 「は、はい!ごらんの通りです。ここは岩盤が硬く、道を広げる事もままなりません。」 「運ぶ物は?」 「今回は調味料と衣類と大工道具です。」 今回は受け取りがメインだからこっちから持って行く物は少ないらしい。 でも今後を考えれば小型の荷車くらい通れる道を作りたいな。 「小ちゃーん!」 大ちゃんだと大きすぎる気がしたので小ちゃんを呼ぶ。 程なくして顔を出した小ちゃんに山の外側ではなくてトンネルを掘れないか調べてもらおうと考えたからだ。岩盤が硬いのはむしろ安全だと思う。 「小ちゃんが調べてくれてる間にご飯食べましょう!お腹空いたでしょ?」 「あ、あの…こちらの方は?」 「紹介が遅れたな。私の伴侶になる人で召喚術士で薬師のスイだ。」 「はじめまして、スイです。よろしくお願いします。」 「よ、よろしくお願いします!」 コナンさんが淹れてくれたお茶とパンとハムと野菜とスープを無限収納から取り出した。 「無限収納をお持ちなんですか!?」 「はい。召喚術の応用なんですよー。」 「うちの祖父も持っておりましたが、中に入れる物の大きさや重さで魔力を消費するとかでたいした物は入れられませんでしたよ?」 「…そうなの?」 …倉庫代わりに大量に入れてるけど。 「こんな素晴らしい方がブリアン様と結婚して下さるんですか? みんなでお祝いしなきゃ! やっぱり婚礼衣装はイェシム絹で?」 「もちろんだ。私の自慢の領民が心を込めて紡いでくれる糸で織った衣装を着たスイはどれほど愛らしいだろうね。」 イェシム絹って最高級品だよ? いいの?
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