第2章

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僕からもみんなにお礼の品を用意したいなぁ。 そんな話をしながら寛いでいたら、小ちゃんが戻ってきた。 《スイ、集落の少し手前に出るよう、トンネルが掘れるよ。》 「良かった!アリさん呼ぶ?」 《ここは鋼蜘蛛に頼む方が良い。》 「鋼蜘蛛さん?」 「そりゃこの山に巣食ってる魔獣ですよ!?」 鋼蜘蛛さんはこの山を縄張りとする魔獣で、獣道に罠を張って通りかかった生き物を獲って食べるんだけど、その罠は見えない鋭い糸なのでうっかり人が通ると酷い怪我をするらしい。 杖をついてゆっくり歩けば大丈夫なんだけど、他の動物に追いかけられた時なんてその罠にかかって死んじゃう事もあるんだって。それは危ないね。 よし!お話ししてみよう!! 《この地に住まう気高きものよ。力無き我に運命を紡ぐその偉大なる姿を目にする栄誉をあたえたまえ。》 魔力を乗せた祈りの言葉は山全体に広がり、必ず魔獣に届く。 程なくして鋼蜘蛛が姿を表した。 上半身は人間で頭に丸い被り物をしているように見える。そこには赤く輝く宝石のような瞳がいくつも並んでいる。そして下半身は蜘蛛で焦茶色に緑のまだら模様。 意外にも背の高さはブリアンと同じくらいだった。 《妾を呼ぶはお前か?》 「はい。ぼくはスイと言います。ここに横穴を掘りたいのですが許可して頂けますか?」 《ここに横穴を?》 「はい。今まではこの山肌に道を作って通っておりましたがご覧のとおり崩れて通れなくなってしまいました。代わりに山を歩くと貴方の鋼糸に人間が引っかかってしまいます。」 《うむ。人間が掛かっても不味くて食えぬし、血の匂いで糸の在りかが知られてしまう。なればその横道とやらを作らせた方が得策か。》 「ありがとうございます!」 ぼくがお礼をいうと鋼蜘蛛さんは一番後ろの脚で立ち上がり蜘蛛らしくお尻から糸を出した。 ドガガガガッ!! 《穴はこのくらいか?》 「出来ればもっと大きくして欲しいです。」 《ふむ。なればこれ程か。》 「お畏れながら貴女様が成体となっても悠々と通れるくらいにして頂ければ、と。」 《そうか。なればこうだな。》 鋼蜘蛛さんが開けてくれた穴は荷馬車が通ってまだまだ余裕の大きさだった。 「ありがとうございます!」 《うむ。ではここを通る時は鹿を1頭差し出せ。さすれば通してやろうぞ。》
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