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伯母に対するジオの気持ちは、ただ苦手なだけだった幼少期から、少しずつ尊敬と信頼に変化した。
伯母は厳しく、ジオを子ども扱いすることはなかったが、その代わり対等な大人として扱ってくれた。
疑問には全て答えてくれ、叱るときには何故叱るのか、その理由をはっきり教えてくれる。
ジオが覚えている限り、母が生きていたころ時々向けられていた冷たい視線以外に、伯母から理不尽な扱いを受けたことは一つもない。
その視線も、一緒に暮らし始めてから段々と少なくなり、今では伯母から感じることはなくなっていた。長い時間をかけて、ジオもまた、彼女から信頼を勝ち得ることに成功していた。
「今日は何を買って帰るんだい?」
お茶を飲みながら伯母がジオに聞いた。
薬を届けに町に来た時、ジオが市場に寄って買い物をしていくのも毎回のことだ。
「今日は米と塩と……あと、割ってしまったので鏡を」
「鏡? ああ、それで髪がそんなに乱れてるんだね。出ていく前に直していきなさい」
伯母に言われたとおり、ジオはお茶を飲み終えると奥の洗面台に行き、鏡を見ながら髪を整えた。
まとめていた黒い髪を一度解いて、櫛を通してからまとめ直す。
「うん、良くなった。清潔感は大事だよ。せっかく綺麗な髪をしているんだから、ちゃんとしなさい」
髪結い紐も新しくした方が良い、と伯母が言うので、それもジオの買い物リストに追加された。
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