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「あれが生き残って、あの子が代わりに焼かれてしまった」
そんな陰口を、ジオは町で何度となく聞いていた。
「優しくて賢い子だったけど、子供があんなに醜い瞳をしているなんてね」
「知らないの? あの子は実の子じゃないよ。町のはずれに捨ててあったって言うじゃないか。それを拾って育ててたんだよ」
「そうなのかい? わざわざ醜い子供を拾って、それで焼かれてしまったんじゃねぇ……」
自分が、母の実の子ではない。その事実も、ジオは町の陰口で知った。
恐る恐る確認すると、伯母はあっさり肯定した。
「私も、私の母も反対したんだけどね。あの子はお前を育てるって譲らなくて、結局町を出て森で暮らし始めた。最後は、お前も知っている通りさ」
伯母はそう教えてくれた。
全くの他人であったのに、自分のせいで母が死んだのだと、その事実がその時、ジオにずしりと重くのしかかった。
けれども、そんなジオに伯母はこう念押しした。
「でもね、あの子は頑固だったから。私は最後には、自分がしたいならそうするべきだって、あの子に言ってやったよ。それで今は、私がそうしたいから、お前を預かってる。わかるかい? お前の母さんは自分がそうしたくてお前を育ててたし、私も自分でお前を預かるって決めて、お前を引き取ったんだ」
伯母はため息をついてこう続けた。
「いくら差別を止めようなんて声高に言ったところで、根深い問題だからそう簡単に無くなったりはしない。妹は運が悪かった。それだけだよ」
そして最後に、ジオの目をまっすぐに見て、伯母はこう続けた。
「だからお前は、生きなきゃいけない。残る差別に負けずにね。覚えておきなさい。お前の瞳は母さんの自慢だった。町で一番美しいとされる、自分の瞳よりもずっとね」
伯母がそう言ってくれたその日から、ジオは自分の瞳を少しずつ、見ることができるようになった。
母親の自慢だったという自分の瞳を、憎むのを止めよう、とも思った。
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