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夏の初め、色濃くなった木々の緑が太陽の光を透かした、あの色が涙で揺らいでいる。
「……怪我人?」
見慣れない姿に一瞬ぽかんとしてしまったジオは、ハッと我に返って言葉を繰り返した。
「そうなんです、助けてください! 私一人の力では、どうにも……」
「わかりました。少し待っていてください」
ジオは急いで髪をまとめると、棚から必要がありそうなものを引っ張り出し、今できたばかりの傷薬と一緒にカバンに放り込んで肩に掛ける。
外に出ると金髪の少女が落ち着かない様子で待っていて、ジオを見るなりこちらです、と先を走り始めた。
さっきは気が付かなかったけれど、森の中を歩くには機能的ではない服装だ。
赤を基調としたワンピース。その裾はふわりと広がっている。
よく見ると、その端々が破けて、土で汚れていた。
「あ、あそこです!」
少女が指さす先には、確かに倒れた人影がある。
「クロード、大丈夫!? しっかりして、人を呼んで来たわ」
少女が人影に駆け寄って肩を揺する。
「落ち着いてください。怪我をしているのでしょう? 動かさないで」
ジオがその隣に膝をついて座ると、少女はパッと手を離した。
体の隣には血痕があり、向かって奥の方から転々と続いている。
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