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「まさかルベルが、獣人だったとは」
「…………で、ん、か」
さわり、さわりと殿下は優しい手つきでわたしの頭からにょきっと生えてしまった耳を、何度も撫でてきた。
正直そこ、わたしの弱点なんです! なんて口が裂けても言えなくて、ぞわぞわするのをぎゅっと目を閉じて、必死になって耐えた。
そしてようやく、ブレスレットの中に入れたウィケウスの香りを嗅げばいいことに気がつき、必死になって腕を上げた。
鼻腔をくすぐる甘いウィケウスの香り。その香りを嗅いだ途端。
「あ!」
殿下の口から非難めいた声が上がったけれど、ようやく撫でられることから逃れることができて、わたしは殿下から数歩、離れた。
「ラーウス殿下……」
「ルベル」
殿下がわたしの名を呼ぶ声は、ずいぶんと非難めいていた。
それはそうだろう。獣人であることを隠して、殿下に仕えてきたのだから。追い出されても仕方がない。
いや、追い出してくれればいいけれど、獣人の間を巡る噂を思い出し、身体が震えた。
曰く。
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